マーケ担当の七転八倒

転職して広告代理店に勤める戦略マーケ担当の備忘録

【読書記録】シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略

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森美術館SNSマーケティング


 

①どんな人が書いた?

洞田貫晋一朗さんという森美術館マーケティンググループに所属されている方

 

②何を書いた本なのか

タイトル通り「森美術館SNSマーケティング戦略」について、実際に運用を担当されている洞田貫さんの考え方を踏まえて解説。

森美術館は2018年美術展覧会入場者数1・2位を占めた実績を持つ。

 

③どのような内容か

2018年の「レアンドロ・エルリッヒ展」を例に挙げながらSNSが動員にどんな影響を与えるか定量・定性の両方から紐解いていくことから始まり、海外美術館の最新の取り組み、具体的なSNSの運用方法、そして美術館がSNSを運営していく上で大事にしている考え方を解説していく。

 

④所感

twitterでのシャープ株式会社からはじまり、世の多くの企業がSNSに取り組み始めて試行錯誤中。美術館もその例に漏れずその波に乗ろうとしている。その中でも森美術館は先進的だけど安心感がある。本書を読むとそれも納得の思想に基づいて運用されている様子が垣間見える。

twitter.com

 

具体的なSNS運用ノウハウなんかは時間とともに新しい正解が次々にでてくる世界なので、新しい情報を常に仕入れる必要がある。その部分はよりも本書で参考にすべきはSNS運用に関する考え方のほうだと思う。

 

企画の芯の部分においては、「インスタ映え」のようなマーケティング的要素は盛り込まれていないということです。これは一般企業、特にメーカーをはじめとした商品開発などどは異なり、クリエイティブとマーケティングが分断されている状況とも言えます。しかし美術館においては、むしろこの分断されているスキームが正しいと思っています。

 

という言葉の通り、あくまでも「企画されたものをどうやって届けるべき人に届けるか」の部分に対してマーケティング的な発想が使われているけど、企画そのものにはマーケティングが入り込んでいないとのこと。

 

そして、後半に行くと「文化や芸術は経済の上にあるべきもの」という言葉が頻出する。

 

マーケティングは重要だけれど、それは作品作りにまで入っていくべきではないという自分の意見とも重なる部分が多くて頷きながら読んだ。特に共感したのは下記の部分。

 

美術館を含め、あらゆる企業の活動は、たくさん売ること、たくさんお客さんを集めること、たくさん利益を出すことが前提になります。それをおろそかにしてはいけない。しかし、自分たちの商品でお客さんにどうなって欲しいのか、自分たちのサービスで社会をどう変えたいのか、そうしたビジネスを超越した志、理念で動いていった方が、結果的により高いところへ行ける気がします。 

自分がプランナーとしてSNS運用に関して企業に伝えるときも、小手先のテクニックより会社として・人としてどんなことを伝えたいかを一番大切にしてほしいと言っている。SNS運用はあくまでも伝えるツール。それを使って何を伝えたいか、それが一番初めに来ないとおかしなことになる。

 

オウンドメディアブームでいろんな企業のアカウントが誕生したけれど結構な割合で活用できていなかったり、そもそも更新が止まったり。

 

「みんなやっているから、うちもやらなきゃ」では絶対に無駄になる。

森美術館の取り組みはそんなことを思い出させてくれました。

 

⑤まとめ

SNS運用に関しての本だけれど、SNSだけにとどまらずマーケティングはツールであることを思い出させてくれる、マーケターにとって大切なことが詰まっている本。

感想をtwitterで呟いたらさっそく森美術館と本の版元である翔泳社のアカウントから、いいね!してもらいました。ちゃんとしてるなぁ。

 

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