マーケ担当の七転八倒

転職して広告代理店に勤める戦略マーケ担当の備忘録

【鑑賞記録】原作の雰囲気をうまく表現しているものの・・・『響 HIBIKI』

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欅坂46平手友梨奈さん主演の映画『響 -HIBIKI-』を観てきました。

土曜の夜遅い時間だったのですが半分近く劇場は埋まっていた印象。

 

あらすじは下記のような感じ

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 スマートフォンSNSの普及により、活字離れは急速に進み、出版不況の文学界。そこに現れた一人の天才少女、彼女の名は『響』(平手友梨奈)。
15歳の彼女の小説は、圧倒的かつ絶対的な才能を感じさせるもので、文学の世界に革命を起こす力を持っていた。文芸誌「木蓮」編集者の花井ふみ(北川景子)との出会いを経て、響は一躍世の脚光を浴びることとなる。

しかし、響は、普通じゃない。彼女は自分の信じる生き方を絶対曲げない。

世間の常識に囚われ、建前をかざして生きる人々の誤魔化しを許すことができない。
響がとる行動は、過去の栄光にすがる有名作家、スクープの欲だけで動く記者、生きることに挫折した売れない小説家など、様々な人に計り知れない影響を与え、彼らの価値観をも変え始める。

一方、響の執筆した処女作は、日本を代表する文学賞直木賞芥川賞のダブルノミネートという歴史的快挙にまで発展していく。

(公式webより映画『響 -HIBIKI-』公式サイト)

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先にどハマりしてしまった『累(かさね)』と良くも悪くも比較して観ていた。 

 

 あらすじを読むと分かる通り、圧倒的な才能を持つ主人公である鮎喰響(あくいひびき)を中心としてその周囲が右往左往しながら影響されていくという物語。 

 

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圧倒的な文才を持つ主人公 鮎喰響(あくいひびき)



 

土屋太鳳さんと芳根京子さんのW主演で見事な傑作になった(少なくとも自分はそう思っている)『累』が才能と野心を武器に主人公が険しい山を登っていくような物語。それに対して『響』はどっしりと構える険しい山それ自体が主人公のよう。 

 

『響』は主人公が誰かに認められたい、脚光を浴びたいみたいな他者が関連する野望を持っていない。響のまわりにいる登場人物(文芸部の仲間やライバルにあたる小説家)が響に影響されて右往左往して変化していく。 

 

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響に影響されて周囲の登場人物も変化していく





 

主人公を演じる平手友梨奈さんも原作の雰囲気をうまく演じていて映画化するにあたっての主人公としては最高の出来だった。 

 

ただ、映画としての仕上がりは微妙な点が多い。 

 

先に書いたように主人公その人はあまり変化や成長をしない、ブレず媚びず自分の道を進んでいく。変わるのはあくまでその周囲なんだけど複数の人物の割と短いエピソードが交代で繰り広げられており、2時間の尺を使う意味があまりなかった。これが連ドラとかならまだなんとかなったのかもしれない。原作の漫画も中くらいのエピソードをつないでいるおり2時間の映画にするにあたっての脚色がうまくいっていない印象。 

 

特に物語の一番最後でクライマックス的に使われる小栗旬さんのエピソードは演技力も相まって面白くなりそうなんだけれど、そもそも本当に最後のタイミングまであまり主人公に絡まない。それゆえ物語も盛り上げたいんだか盛り上がりたくないんだかよくわからないテンションで終わっていた。(最後のセリフ含め雰囲気自体はとても好き) 

 

一番問題だと思ったのが、北川景子さん演じる担当編集者。一番主人公に近い位置で振り回されて一番影響を受けそうな登場人物なのだけれど、そもそも彼女がどんな人で響と接していて何を感じて考えているのかがわからずとても浅い印象しかない。 

 

アヤカ・ウィルソンさん演じる凛夏はその点、圧倒的な才能を持つ響に戸惑い、それを乗り越えようとするのでとてもいいのだけれどエピソード自体は中盤過ぎくらいで終わってしまう。 

 

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映画には8年ぶりに出演のアヤカ・ウィルソンさん



 

原作では割と見せ場がある幼馴染の涼太郎(板垣端生さん)に至っては、ほぼ空気でなんのためにいるのかもはやわからない。 

 

比較に出した『累』も割と主人公周りの登場人物は存在感がない人の方が多いけれど、圧倒的な主人公が突き進んでいく様子とその結果たどり着いた結果をきちんと描いていたから、弱点は多いものの凄い作品に仕上がっていた。 

 

『響』は総じて、主人公の平手友梨奈さんは堂々たる振る舞いで演出や撮り方もそれをうまく引き立てていた(目のアップとか特に好き)けれど映画としてストーリーを進めていくにあたって本当に注目すべき周りの登場人物の描き方と構造が適切ではなかった。 

 

 

いっそのこと響とは別の物語上の主人公をもう1人設定して(編集者やライバル小説家)、そこから見た響という描き方にすれば映画としてうまくまとまっていたのではなんてことを思う(きっとそういう案もあったのだろうけれど)。 

 

小栗旬さん演じる努力がなかなか実らない小説家の嫉妬や、北川景子さん演じる編集者の「作り手になれなかった」者の抱える絶望とか、アヤカ・ウィルソンさんの親の名前で売り出されることになる葛藤とか集中すればもっと深いところまで描けたはずなのに全部をまとめようとすることで中途半端になっている。 

 

あと、小説という題材である以上、難しいのだけれど響が生み出した作品の凄さがなんなのかあまりよくわからない。また比較してしまうけれど『累』では圧倒的な演技をスクリーン上で表現できているのでその点でも『累』のほうが強く印象に残ってしまう。 

 

出来上がった後で外野がとやかく言うのは野暮なのはわかっている。ただ、個人的には映画として出来とは関係なく、好きなところも多い作品なので、もったいないと思ってしまった。 

 

平手友梨奈さんは欅坂の楽曲なんかで知っている程度で、演技をちゃんと観たことはなかったけれど、堂々たる主役でした。アヤカ・ウィルソンさんを観るのは『パコと魔法の絵本』以来だったけど笑っているのに憂いを感じさせる影のある演技で素晴らしかった。柳楽優弥さんのあの嫌味ったらしさ全開の田中の響との絡みはもっと観たかった。昔売れていた小説家こと鬼島(北村有起哉さん)もテレビコメンテーターにいそうな軽薄な感じが出ていて良かった。 

 

 

そんな感じで脇を固める人もしっかり描けば主人公の響ともう1人だけで充分傑作になっただろうにとても惜しかった。 

 

一話一話で完結できる連ドラの方が原作との相性はいいはずなので連ドラ化希望です。

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原作の響そのまんまの雰囲気

 

 (原作漫画:登場人物の持つ雰囲気をうまく映画化しているのが原作を読むとわかる)