マーケ担当の七転八倒

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【観劇記録】『野がも』アマヤドリ

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アマヤドリの『野がも』を花まる学習会王子小劇場で観てきた。

 

「アマヤドリ」は広田淳一さん率いる東京の劇団。2001年に前身となる「ひょっとこ乱舞」時代から数えればかなり長い期間活動されているし、これからも東京の演劇界の最前線で戦い続けるのだろう。

 

作風は集団で舞う、群舞なんかを交えつつも基本はストリートプレイ。

劇場に入った瞬間から、どこにも似ていない空間と作品。アマヤドリにしかアマヤドリの作品は作れないと思うばっきばきに尖った劇団だと思っている。

 

そんなアマヤドリが定期的に古典戯曲に挑戦しており、今回はイプセンの『野がも』に挑戦するとのこと。

『野がも』は何回か観たことがあったのだけれど、古典特有の言い回しや上演時間の長さなんかで集中できず面白い上演を観たことがなかった(不勉強なだけですが)。

 

話を乱暴に要約すると

グレーゲルスという青二才が「みんな正直でいれば、最初ちょっと辛いけど、そのあとみんなハッピーだよ!」と正義感と善意の押し売り強盗をやらかして、秘密はあるものの幸せに過ごしていた父、母、娘の3人家族を木っ端微塵に破壊してしまう

 

歴史に名を刻む天才作家がその才能を遺憾無く発揮して、丁寧に登場人物を不幸のどん底の向こう側までぶっ飛ばす戯曲。

 

今回のアマヤドリの『野がも』を観て、あの戯曲からこんな作品になるのかと驚いた。

上演時間170分もある会話劇なのだけれど話がだれないし、それぞれの登場人物の感情が強烈に感じることができる。

 

簡単に言うと「めちゃくちゃ面白かった」

 

古典の上演だと著名な演出家や役者の公演でもコスプレして台詞覚えた喋ってるだけじゃん!みたいに思うことも少なくない。

だけど、アマヤドリの『野がも』は130年前に書かれた戯曲なのに身に覚えがあって、自分の嫌なところを見せられているようなドロドロした感覚があった。

 

会話劇なのに舞台全体をダイナミックに行き来し、立体的で広々としているのに圧迫感がある空間が立ち上がっている。

 

人間の情けないところを容赦なく描きつつ、それを別に断罪なんかせずにいて、登場人物が人間になってそこにいるように感じられた。

古典を観るときは、なんだか小難しいことを考えながら観なければいけないという思いがあるのだけれど、アマヤドリの『野がも』は戯曲の面白さを役者の身体と演出を通じて存分に引き出していた。

この面白さって別に学がない自分のような人間でも(知識があればもっと面白いのだろうけど)感じられる。

戯曲に描かれる人間とその関係性を役者の身体と装置を使って立ち上げる、それをシンプルにものすごいレベルでやってのけるアマヤドリをこれからも追い続けます。

『野がも』は10月1日まで花まる学習会王子小劇場で上演しています。

 

(公演情報:公式webより)

amayadori.co.jp/archives/10805

『野がも』

作 ヘンリック・イプセン/翻訳 毛利三彌/上演台本・演出 広田淳一

 

《キャスト》

倉田大輔

渡邉圭介

中野智恵梨

相葉るか

一川幸恵

宮崎雄真

(以上、アマヤドリ)

 

東理紗(ピヨピヨレボリューション/東東東東東))

山森信太郎(髭亀鶴)

梅田洋輔

山拓

大原研二(DULL-COLORED POP)

 

《スタッフ》

 

作・演出   広田淳一 

舞台監督   都倉宏一郎

舞台美術   中村友美           

照明     三浦あさ子

照明操作   野口瑞貴

音響協力   [東京公演]田中亮大(Paddy Field)/[伊丹公演]あなみふみ

衣裳     村川あかり                                  

文芸助手   稲富裕介                               

宣伝美術   山代政一 

制作     桜かおり

演出助手   木村恵美子/野村春香/秋田満衣/石田麗/藤家矢麻刀

撮影     赤坂久美/bozzo

企画製作   アマヤドリ

主催     合同会社プランプル

提携     伊丹市立演劇ホール[伊丹公演]

協力     せんだい演劇工房10-BOX/花まる学習会王子小劇場/株式会社CRG/A-Team

       株式会社エヌウィード/株式会社リベラス/株式会社CRG/DULL-COLORED POP

       髭亀鶴/ピヨピヨレボリューション/スターダス・21