(鑑賞記録)どいつもこいつもクズばかりだけど・・・『アイ・トーニャ 史上最大のスキャンダル』
本作が元にしている1994年に発生したナンシー・ケリガン襲撃事件は世代的に全く知らなくてあまり興味がなかったものの、人に勧められた映画は全部観る派なので行ってきました。
結果、めちゃめちゃ面白かったです。
雑にあらすじを書いておくと、アメリカ人として初めてトリプルアクセルを決めた実在のフィギュアスケーターのトーニャ・ハーディングの半生を描いた映画。
トーニャ・ハーディングはオレゴン州の貧困家庭に生まれ、幼い頃から家庭内暴力に晒されながら実績を積み重ね、オリンピックへの出場を決めるもののライバル選手のナンシー・ケリガン襲撃事件に関わった容疑でスケート界から永久追放された。
映画は襲撃事件を話のクライマックスを置き、擬似インタビューで過去を振り返るの体を取りながらトーニャが生まれ育った環境を描く。
この環境がなかなかに壮絶な貧困。「貧乏と貧困は違う」とは湯浅誠さんの言葉だけれどその言葉通り、文字通り構造的に豊かさや安心・安全から隔絶された環境。そこから抜け出す唯一の希望として母親に半ば強制されたスケートという道を突き進んで行くトーニャの姿をものすごいテンポ感で描いていく。
言葉を選ばず言うなら、どいつもこいつもクズばっかり。
話の中心になるDV母親とトーニャのDV夫、その友達の自称「テロ対策のエキスパート」は特に。
(映画で観るクズほど面白いものはないので上は褒め言葉)
常に暴力をふるい続ける母。一回だけ優しい顔をしたかと思えば・・・
マーベル映画での役(バッキー)から一転。最低男を演じる
映画用にだいぶ誇張されているのかと思えば、そのままだったという電波男。ただ、直接描かれないけど彼がそうなってしまった背景に思いをはせると少し同情してしまう。いや、同情の余地はないんだけど・・・・
そんなクズに囲まれたトーニャも生きて行くために歯を食いしばってスケートにしがみついて行く。
ただ、スケートに求められる「品」を備えていないが故に干されて、スポンサーもつかず、ウェイターで生活費を稼いで闘う。
20歳そこそこなのにこの状況。
そしてそこから起こるライバル選手への襲撃事件。
映画では本人たちの証言の食い違い・矛盾まで映像化しているのでトーニャたちがどこまで関与していたか正直わからない。ただ、トーニャが置かれていた壮絶な環境とラストで流れる実際の演技映像の美しさのギャップに完全に涙腺を持っていかれた。
襲撃事件の司法取引でスケート界を追放されるトーニャ
スケートシーン含めて、とにかく演出がキレッキレでまったく飽きずに最後まで集中して見れた。反動で帰りの電車で疲れて爆睡でしたが。
主演のマーゴット・ロビーが自身のキャリアを広げるために製作にも参加していたり、作り手の熱量が普通にとっても面白い題材を二段も三段も上のレベルの映画に押し上げた大傑作。たぶん、これから何度も見返すことになると思います。