パンとアート

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【映画】『若おかみは小学生!』泣き死にかけた恐ろしい作品

 

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周りの人から物凄い熱量で勧められたものの、ポスターや予告編の絵柄が個人的に苦手な分野なのでなんとなく敬遠していた。
仕事で銀座に行ったあと調べたらすぐに行ける時間に上映があったのでそのまま鑑賞。
 
子供向けアニメだけれど夜9時過ぎての上映&日比谷という立地だったため場内はほぼ仕事帰りのサラリーマンで埋め尽くされていた。
 
 

泣き死ぬかと思うくらいやられました。

 
 
タイトルから「小学生が経営難の旅館の若女将になって奇跡の手腕で再生」的なストーリーを勝手に思い浮かべていたけど全然違っていました(不要な文章)。
 
小学6年生の女の子おっこは交通事故で両親を亡くし、祖母の経営する旅館「春の屋」に引き取られる。旅館に古くから住み着いているユーレイ少年のウリ坊や、転校先の同級生でライバル旅館の跡取り娘・真月らと知り合ったおっこは、ひょんなことから春の屋の若おかみの修行を始めることに。失敗の連続に落ち込むおっこだったが、不思議な仲間たちに支えられながら、次々とやって来る個性的なお客様をもてなそうと奮闘するうちに、少しずつ成長していく。(映画comより)
 
 
序盤の故郷のお祭りから帰る車内での家族の明るい会話シーンに漂う不穏さ。なんとなくこのあと起きることは想像できたけど、自分だけが助かり、両親がともに事故で死亡という、かわいい絵柄に似つかわしくないハードな展開。
 
すこし湿っぽくなるのかなと思ったらそんなことはなく、割とあっさりした展開で主人公のおっこも淡々としているのに拍子抜け。
 
初見ではわからなかったけど、この時点では両親の死を完全には受け入れていないが故の振る舞い。
 
祖母の旅館で働いていくことを通じて、自分と他者と向き合い成長することで居場所を見つけるというこれ以上ないというくらい真っ当な成長物語。
 

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ひょんなことから旅館の若おかみとなる主人公おっこ
 
これだけ真っ当なのに説教臭くなっていなくて新鮮さすら感じた。
 
アニメとして動いているだけでこんなに楽しくなるのはパンフレットにも書いてある通り作画のクオリティがとんでもなく高いから。
登場人物の自体はデフォルメされた絵なのだけれど彼ら・彼女らを囲む世界に素人の自分にもわかるくらい画面上のあらゆるところに作りこみがある。
 
幽霊や妖怪(?)といった非日常的な登場人物がでてくるのに世界に奥行きと質感を感じる。
 
世界にどっぷりつかった後に訪れる、ウルトラハードな展開でおっこが抱えていた・隠していた想いがあふれ出るあたりから涙腺崩壊。
他者を助ける・他者に助けられることを知ることで自分の居場所を見つけ、人が自分の意志で歩き始める瞬間を目撃できた。
 

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様々な問題を抱えた宿泊客がやってくる
 
ここまでに辿る道筋が違っていれば、この展開にも納得できなかったかもしれない。
おっこという登場人物の周りに奥行きのある登場人物を完璧なタイミングで配置し、歩むべき道を歩ませている脚本の上手さに脱帽。
 

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周囲を助け、周囲に助けられ成長していく
 
ちょっとエピソードを詰め込みすぎだったり、色々と的確過ぎて作り手の思惑が見えてしまったり気になるところはあるけれど、「絵が苦手」なんて理由で観るのを戸惑っている人がいれば自分の持つすべての能力を使って劇場に引っ張っていきたいくらいに大満足の一本でした。
 
 
余談になるけれど、下記の記事がマーケティング観点で面白かった。
 
 
若おかみは小学生!』は最初は家族向けに宣伝したけどオープニング成績が芳しくなく、メインの劇場で打ち切られたりしたけれど、SNSでの評判・口コミをもとに大人向けへの宣伝に切り替えたとのこと。
 
どんなにいい作品をつくっても誰に向けて宣伝をするのか誤ると誰にも届かない。
今回は幸運にもSNSを起点とした口コミが作品を救ってくれたけど、そういう挽回が起こらずに誰にも発見されずに埋もれてしまった作品がきっとあるのだろう。
 
マーケティングで作品を作る」ことには反対だけれど「作った作品を適切なマーケティングで届ける」ことには賛成。
 
埋もれてしまう作品を少しでも減らせるよう世のクリエイターのマーケティングスキルが上がればいいなぁと思う今日この頃でした。
 
公式サイト