【鑑賞記録】『ザ・プレデター』人の命が特売セール状態
『ザ・プレデター』を仕事帰りに観てきた。
『プレデター』は第1作の公開が1987年。まだ生まれていなかったのでリアルタイムで観てはいないのだけれど、小学生だった時に図書館で貸し出していた(凄いものを置いていてくれた図書館に感謝)のを家で鑑賞した時にあまりの衝撃にそれから小学校で布教を開始。週に一回はクラスで一番大きなテレビを持っている友達の家に集合し鑑賞会をやるという小学校時代を過ごした。
お話を雑に書くと、高度に進化した地球外生命体が儀式だったり観光で地球にやってきてお手軽に人間を狩る。姿を消せる光学迷彩だったり、自動照準で破壊力抜群のバズーカを持っているかと思えば手裏剣や剣(みたいなもの)で肉弾戦を繰り広げる。頭がいいんだか悪いんだかさっぱりわからない。
今考えると、どうかしている設定だけれども小学生にとっては夢に出てくるくらい恐ろしくてかっこよかった。そんな地球外生命体をボコボコにしてしまうボディビルチャンピオンにさらに夢中になるのだけれど、それはまた別のお話。
それから時が流れてまさかアラサーになってまでプレデターとの付き合いが続くとは当時の自分は思いもしなかっただろう。
第1作がヒットした後、続編だったりエイリアンとのコラボ作品が作られたり漫画化されたりとプレデターは大活躍。
ただ、恐怖の大部分は「正体がわからない」ことに大きく起因すると思っていて、1作目で恐怖の対象とされていてもそれ以降は正体がバレているのでどうしても恐怖の対象になりずらい。
日本でいうと『リング』で貞子が日本中を恐怖に叩き込んだけれど最近では3Dで本当に飛び出してきたり、ハロウィンでのお手軽コスプレ対象にされたり、ほかの幽霊(?)である伽倻子と合体させられたり、アプリにされたりすっかりキャラ化してしまっているのと似ている。
『ザ・プレデター』では監督のシェーン・ブラックが「プレデター本来の恐ろしさを描きたい」とインタビューで語っていたし、予告編でも必死に「真面目なアクション映画」風な描き方をしていた。
シェーン・ブラックの他の映画を観ていたのに「どんな恐ろしい映画が観られるのか」と胸をときめかせてしまっていた。
恐怖を期待していったら、爆笑の連続の俺たちが自慢されたいザ・アメリカ的な景気のいい映画に仕上がっていました。
登場人物全員が(プレデター含め)信じられないほど仕事が雑だし、いいやつでした。
突っ込んだりイライラしたら負けになるという構造で真面目に観ると損をしますが、ポップコーンでも頬張りながら観れば映画館を出る時にはきっと体調が良くなります(個人の感想)。
人の命が羽根のように軽くて苦悩とか葛藤という言葉をどこかに置き忘れたハイな物語が展開。完全武装の正体不明の異星人に仲間を殺されたりしたら普通怒ったり恐怖に駆られたりすると思うのですが、ザ・アメリカ人の登場人物は下ネタを叫びながらみんなでバスで追いかけるし、バスを破壊されたら無駄にかっこいいバイクでさらにハイテンションで追いかける。宇宙船のエンジンに笑顔で突っ込むわ、敵であるプレデターも超ハイテクな武器を持っているわりには素手でボコボコにしたり、わざわざ飼い「犬」で追い詰めたり、敵も味方も漢気に溢れる活躍を見せる。
秘密組織はじめとした登場人物たちの頭の悪さだったり、プレデターが実は地球を侵略しようとしていたとか、後付けにもほどがある設定だったり欠点をあげればきりがない。
この作品に激怒している人が結構な割合でいるみたいだけれどそれも納得。
だけれども、なにかを守ろうと父親が必死になって成長する姿にほろりとし、近年稀に見る人の命の軽さと軽快なノリに仕事のストレスから解放してもらった自分からすれば大満足の一作でした。
あのラストから次作につながると次は完全にコメディ映画に分類されそう(観てみたくはある)