マーケ担当の七転八倒

転職して広告代理店に勤める戦略マーケ担当の備忘録

【観劇記録】『私の家族』トリコ・A@シアター風姿花伝

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〈あらすじ〉

 カヤは5年前まで頻繁に通っていた喫茶店に顔を出す。ママが「買い物に行く」と言ったきり失踪し、マスターが落ち込んでいるらしい。当時の常連客仲間であるクミに誘われ、喫茶店に訪れたカヤは、そこで顔見知りの常連客と再会する。しかしクミはなかなか現れず、マスターも出てこない。やっと出てきたクミは、ハダシだった。
 
 
 
尼崎事件をもとにした「家族」の話。
それぞれに事情を抱える登場人物がゆるやかな疑似家族を形成し、明確な邪悪な存在としての中心は明示されないまま「なんとなく」時間が経っていき、なんとなく人が死んでいくまでに事態は悪化してしまう。
 
舞台には元喫茶店の店内を想起させる簡単な舞台装置(椅子・テーブル・照明)のみで音響・照明も最小限に抑えられていた。
 
とにかく気持ち悪かった。それは登場人物の思考・行動があまりにも愚かに見えたからだ。アフタートークや関係者の人の話ではお客さんの感想の多くが「怖い」というものだったとのこと。
多くの人が「怖い」と感じたものを自分はなぜ 「気持ち悪い」と感じたのか。それはおそらく、自分がいま一人暮らしで心身ともに健康で人間関係や経済的にも安定しているからだと思う。
 
舞台上の登場人物ひとりひとりの行動・思考は理解できるものの「合理的」に突っ込みを入れてしまっていた、入れられていた。
 
もし、自分の家族が自分を束縛するような家族だったら、どこへも行けない状況で嫌な人にも毎日会わなければいけない状況の真っただ中だったら、たぶん感想は変わっていたはず。
 
幸いにも自分と舞台上で起こっているようなことの間に距離を感じられたから愚かだと感じ、「気持ち悪い」という感想になったのだと思う。
 
特に登場人物のひとりのマスターは本当に大嫌いな種類の人間。自分の物差し以外の価値観があるということを想像もせずに押し付けてくる感じが本当に嫌だった。
 
 
邪悪なひとりの人間にすべてを押し付けず、全員少しずつ加害者・全員少しずつ被害者という登場人物を立ち上げて、関係性で物語を進める技量に感服。公演は終わってしまったけど、期間を置いた再演があればそのころの自分は何を思うのかとても興味深い。
 
【作品情報】

トリコ・A演劇公演2018「私の家族」

作・演 山口茜

 

〈公演日程〉

2018年1月18日〈木〉〜1月21日(日)

〈劇場〉

 シアター風姿花伝

 

〈出演〉

天明留理子(青年団) 中田春介 藤原大介 吉岡あきこ 長尾純子 昇良樹

 

〈スタッフ〉

舞台監督:浜村修司 照明:池辺茜 音響:小早川保隆 衣装、メイク:南野詩恵 宣伝美術・舞台写真、記録動画:堀川高志 宣伝写真・舞台美術協力:松本成弘 ドラマツルグ:山納洋 演出助手:朴建雄・大貫はなこ 票券協力:梶川貴弘 協力:青木敦子 NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク、劇団飛び道具、(有)ワンダープロダクション、SARUGAKUCOMPANY、DAE.inc. stampLLC. 助成:公益財団法人セゾン文化財団、芸術文化振興基金 企画・製作 トリコ・Aプロデュース