マーケ担当の七転八倒

転職して広告代理店に勤める戦略マーケ担当の備忘録

【観劇記録】やさしくとも寂しい観劇体験 やみ・あがりシアター第11回公演 『ボーダーリング』

 

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やみ・あがりシアター 第11回公演『ボーダーリング』

 

6月9日15時の回を当日券で観劇。

11時の回に行くはずだったけれど別件のため予定変更。本当に申し訳ない。

 

やみ・あがりシアターの笠浦さんはこのインタビューからもわかるように人智を超えた頭の良さを演劇に特化させたらこうなる、という存在。

「演劇以外ありえなかった」東大卒・演劇一本で生きる笠浦さんの「すべてを捨てる覚悟」 | UmeeT

 

少しだけでも関わった人は彼女のファンになること間違いなし。

そんな笠浦さんが主催する劇団「やみ・あがりシアター」の本公演に行ってきました。

やみ・あがりシアターは「ヒトのやんでるところとあがってるところを両方、病気が治ったばかりのようなハイテンションでお届けしたい」というコンセプトのもとに芝居作りを行う劇団。

 

第11回公演の今回は「忍者が婚活」というそれだけで面白さが約束された設定。

 

突飛な設定ながらも内容は地に足がついていて、「恋愛と婚活は別物」という視点から「他人同士が一緒にいるとはどういうことか」を問うてくる骨太な内容。

 

許嫁(いいなづけ)に逃げられて、東京に婚活に来た忍者の主人公がパーティやらデートを重ねていきつつパートナーを探すというストーリー。物語を通じて、恋愛と婚活を対比させることで相対化させ、それぞれの意味を探っていく。

主人公は目立ってはいけない忍者という身分でありながら、生まれつき目立ってしまうコンプレックスを持つ。その他の登場人物もそれぞれに面倒くさいコンプレックスを持ち、パートナーになるかもしれない相手にそれをどうやって打ち明けるか、そして相手はどうそれを受け止めるのか葛藤の連続。

 

勢いだけではどうにもならない現実に直面しながら、それでも踊る登場人物たちが魅力的。

願わくばどうかみんな幸せに、それが叶わないことを知っていながら思わずにいられない。明るく突飛で笑うのし優しいのに哀しい、不思議な観劇体験となりました。

 

 

やみ・あがりシアター公式HP

http://yamiagaritheater.jp/

【鑑賞記録】誰よりも不謹慎なのに誰よりもまっとう『デッドプール2』

残業終わりの深夜12時上映の回を観てきました。

遅い時間だったけど公開初日ということもあって広いIMAXの劇場の4分の1くらいは埋まっていた。

 

デッドプールは一応スーパーヒーロー映画で赤装束で2丁拳銃&刀で敵を容赦なく殺戮していく。

デッドプール"Deadpool"という言葉自体が「死のリスト」というなかなかヒーローにしては不謹慎な意味(そもそも第一作で自分のことを「スーパーだけどヒーロー要素は薄い」的なことを言っていた)

 

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第一作のデッドプールは第四の壁を破って話しかけてきたり、ヒーローものだけどグロい、ずるい、エロいなどで話題になっていた。楽屋ネタ満載で本編はとにかく終始ふざけまくっているけど、その中身はめちゃくちゃ硬派で真面目。

普通のヒーロー映画ではまだ出せないであろう設定の登場人物と表現が満載。

レズビアンカップルとかセックスワーカーの恋人とかまだディズニーでは出せないんだろうなぁ。

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初登場の雪緒(忽那汐里)レズビアンの恋人同士という設定

まっとうなことをまっとうな顔して言うと押しつけがましさがでたりするけれど、デッドプールの場合は説教臭さ皆無。そこのバランスがハチャメチャなんだけどとれているのがデッドプールという映画そのものの価値なんだろう。

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映画本編ではとてもまっとうなメッセージを投げかけてくる

普通に見ても十分面白いけど、画面の中に結構な量のパロディが含まれているので色々映画を観ている人は別の楽しみ方ができそう。単純に映画のパロディだけでなく、現実世界の業界のあれこれもネタにしているので観終わった後は色々調べと発見がある。

約10年前のXメンシリーズにもライアン・レイノルズデッドプールとして出演していて、それが大不評だったとか初めて知った。

 

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『Xメン ゼロ』でのデッドプール


グロさとかエロとかそういうものに耐性があるなら絶対楽しめるので観に行った方がいい作品。

 

映画評論家の町山智浩さんによるデッドプール2紹介

www.tbsradio.jp

 

 

【講義メモ】『脚本療法』とはなにか? 三宅隆太監督@アトロク

TBSラジオ「アフター6ジャンクション」に三宅隆太監督が出演していたので放送内容をかいつまんでまとめておきます。

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ぬいぐるみ伝道師としても有名な三宅監督


三宅監督は映画監督・脚本家その他いろいろな肩書きをお持ちですが今は省略。「スクリプトドクター」という職業を日本に認知させた方。

スクリプトドクター」は脚本のお医者さんと言われる職業で、様々な理由で迷走する脚本を救うことを仕事にしています。

 

自分も2年ほど前、三宅監督が半年ほど担当されていた連続講座を受講し、その仕事の面白さに深く感銘を受けた。(詳しくは三宅監督の著作をチェックしてみてください。どれも一読の価値あり!)

 

出演回すべてが面白い三宅監督がアトロク初出演のテーマは「脚本療法」。

 以下は聞いている時にとったメモです。走り書きなので三宅監督が意図したことと違う可能性がありますのでご留意ください

↓で放送音声聞けます

radiocloud.jp

============放送内容メモ============

○脚本家のある人が、映像化されない脚本に価値はないと言っていたが本当にそうなのかと考えたのが、「脚本療法」のはじまり

 

○自分を固くした(時間を止めた)人物と似たような環境を脚本で配置して自分の人生を相対化することで気づきを得て、止まっている時間を動かしていくことができるのではないか

 

○自分で気づいたものは強いものになる。外から言われたことではなく、自分の気づきが重要。気づくこと、を手助けする

 

○面白いのが、気づきを得た人間は「満足して」余裕ができることで自分の執着から離れて他人の視点に興味をもつことがやりやすくなる傾向にある

 

○何度もセリフを書き換えていくと、登場人物が自分から離れていってしまう。形にはなっても気持ちの面でついてきていない脚本になってしまう

 

○小説でも同様のアプローチができるのかもしれないが、脚本のほうがやりやすいのではないか。それは、脚本は物語を進めるために登場人物が「 アクション」を起こさなければいけないから。脚本は時間の中で何かをしなければならないが、小説は自己凝視だけができてしまう自己凝視だけしているとお話が進んでいかない
 

 ○登場人物を目に見える形で行動させることでそれを相対化した形で見ることができる

 

 ○脚本は主観的なようであってそうではない。常に社会や他者との軋轢があってこそ物語が進むもの

 

○現実世界でいきなり社会や他者との軋轢を経験することはきついので擬似的に脚本を書くことで準備ができるのではないか

 

○(三宅さんの場合は)女性を(というよりも異性を)主人公にした方が脚本が描きやすいと感じる。男性が主人公の作品を書くと、普段自分が感じている負担や同調圧力が自意識としてセリフを書く上で邪魔をしてくる

=================================== 

 

 

放送後記

https://www.tbsradio.jp/257724

 

三宅監督の著作

スクリプトドクターのプレゼンテーション術 (DIALOGUE BOOKS)

スクリプトドクターのプレゼンテーション術 (DIALOGUE BOOKS)

 
スクリプトドクターの脚本教室・初級篇

スクリプトドクターの脚本教室・初級篇

 
スクリプトドクターの脚本教室・中級篇

スクリプトドクターの脚本教室・中級篇

 

 

2018年6月公開で観に行きたい映画

尊敬する三角絞めさんにならって6月公開予定で観に行きたい映画を記録しておきます。

6月公開ではトータル19本。。。

名画座でも観たいものが多い。特に早稲田松竹の『勝手にふるえてろ』は絶対に行く。

『アイ・トーニャ 史上最大のスキャンダル』が最高だったマーゴット・ロビー主演の『死の谷間』は公開されるのを知らなかったけれど観に行く。

 

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その他、南アフリカのホームレスの少年がスケートボードでカリフォルニアを目指すドキュメンタリーの『アイ・アム・タレント』はじめノーチェックだったけど面白そうなものが多い。

改めてリストにすると候補の多さに震える。。。頑張ってアフターファイブで解決しよう。

 

情報源はシネマトゥディから

https://www.cinematoday.jp/movie/release/201806

 

(数字がふってあるものが観たい映画)

6月1日公開

①『デッドプール2

△『50回目のファーストキス』

②『レディ・バード

③『バーフバリ 王の凱旋 完全版』

④『ビューティフル・デイ

△『OVER DRIVE

 

6月2日公開

△『馬の骨』

⑤『METライブビューイング2017ー2018 サンドリヨン』

△『修羅の華

△『最初で最後のキス

△『PEACEMAKER』

△『EVEN 君に贈る歌』

 

6月8日

△『羊と鋼の森

△『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています』

△『Vision

⑥『万引き家族

⑦『英国ロイヤル・オペラ・ハウス「バーンステイン・センテナリー」』

△『30年後の同窓会

△『WAKITA PEAK』

 

6月9日公開

△『あさがおと加藤さん。』

△『終わった人

△『オンネリとアンネリのおうち』

△『榎田貿易堂』

△『シネマ歌舞伎 東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖

△『曇天に笑う<外伝>』

△『トウキョウ・リビング・アイドル・デッド』

⑧『ザ・ビッグハウス』

△『それから』

△『リディバイダー』

 

6月15日公開

△『空飛ぶタイヤ

△『メイズ・ランナー 最後の迷宮』

△『劇場版ドルメンX』

△『ワンダー君は太陽

⑨『ニンジャバットマン

△『ゲッペルスと私』

△『夜の浜辺でひとり』

△『傀儡』

△『フジコ・ヘミングの時間

△『母と言う名の女』

△『リミット・オブ・アサシン』

△『V.I.P 修羅の獣たち』

△『ゆずりは』

△『第二警備隊』

△『スパイナル・タップ

△『ALONE』

⑩『ダークサイド』

 

6月22日公開

△『ごはん』

△『キスできる餃子

△『店名の城』

11『焼肉ドラゴン』

△『オンリー・ザ・ブレイブ

△『ウタモノガタリ

 

6月23日公開

△『ブリグズビー・ベア』

12『カメラを止めるな!』

13『死の谷間』

△『世界で一番長い写真』

△『猫は抱くもの

△『告白小説、その結末

△『ガザの美容室』

△『祝福 オラとニコデムの家』

14『マッド・ダディ

△『わたしに××しなさい!

△『女と男の観覧車』

△『アンダー・ザ・ドッグ ジャンブル』

 

6月29日公開

△『アメリカン・アサシン

15『アイ・アム・タレント』

16『ハン・ソロ スターウォーズ・ストーリー』

17『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』

 

6月30日

△『パンク侍 斬られて候』

△『明日にかける橋1989年の想い出』

△『それいけ!アンパンマン かがやけ!クルンといのちの星』

△『ワンダーランド北朝鮮

△『宇宙戦隊キュウレンジャーVSスペース・スクワッド』

18『正しい日 間違えた日』

△『名前』

△『審判』

19『少女邂逅 』

△『モダン・ラブ』

 

 

 

 

 

 

 

(読書記録)『下り坂をそろそろと下る』平田オリザ 著 (講談社現代新書)

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著者の平田オリザさんは演劇の世界では超有名人。

日本で最大級の演劇団体である青年団を率いつつ、行政にも関わり教育や地方のあり方に対して積極的な活動をされている。「超」がいくつあっても足りないほどの超人で、年中、世界中あちらこちらで公演・講演会・ワークショップ・執筆などなど様々なところでその姿を見かける。

 

自分もなんどかワークショップに参加したりしてお話ししたこともある。印象的だったのは1ヶ月に渡って演劇創作のワークショップに参加した時のこと。

 

自分を含めて数人が1週間くらいかけて考えてきた物語のプロットを読んでもらった時、ほんの数秒しか見ていないのに前回と比べてどこが変わって、どこが良くなってどこが悪くなったか、そしてそれを解決するためにはこういう考え方があるよと幾つも提示された。

 

印象としては読むというより「スキャン」していたという言葉の方が正しい。それくらい一瞬だったのだけれど指摘の全てが的確すぎて全てを見抜かれていた。頭のいい人にはいっぱい会ったけど、平田さんはその中でも別格。

 

著書を何冊も出されているけれど今回読んだ『下り坂をそろそろと下る』は2年前に出版された本。実はすでになんども読んでいるけど、平田さんの本は読むたびに新しい発見があるのでほかの著作も含めて定期的に読み返している。

 

「まことに小さな国が、衰退期を迎えようとしている」

坂の上の雲』の出だしを改変した一行で始まるこの作品は、下り坂を降り始めた日本がとるべき道を提言する日本論になっている。

 

実際に日本中を飛び回り、そこで見てきたそれぞれの地域の取り組みの事例の中にピークを過ぎた日本にとってのヒントが詰まっている。

 

瀬戸内海の小豆島、城崎国際アートセンターで有名な豊岡、東日本大震災後の女川・双葉など、地理的に東京などと比べて圧倒的なハンデがある中、そこにしかないものを見出しそれを外に向けてアピールすることで道を切り開いている様子には頼もしさを感じる。

とはいえ、本書のメッセージは別に「今は衰退していても工夫次第でこれからもバリバリやれるぜ!」という類のものではなく、果てしない後退戦を耐え凌ぐかというところにある。

 

「おそらく、今の日本人にとって、最も大事なことは、「卑屈なほどのリアリズム」を持って現実を認識し、ここから長く続く後退戦を「勝てないまでも負けない」ようにもっていくことだろう」(p220)

 

という一文に象徴されるように、バブル期のような夢(私は経験していないんですけどね)を追いかけたり、太平洋戦争時のように自分たちを過剰に評価して無謀な道を選ぶことをせずに、いかに成熟した国になることがアジアという地域においても大事か、そしてそのヒントはあちこちに、特にいままで日本では軽視されてきた文化的な文脈・営みのなかにあるということをわからせてくれる。

先に書いたようにバブルを経験していない生まれた時から右肩下がりの状況に置かれている自分にとってこの主張はすごく腑に落ちた感覚。

 

いまものすごい勢いで広がっている、働き方に関する意識改革だとか、地方での活動だったり事業だったりはたぶんそれを当たり前のように持っている人たちがどんどん社会の中心になってきていることの証明のように思う。

 

まだ当分、会社が人生にとって大きな割合を占める考えが主流だろうけど、それとは違う生き方・あり方を肯定してくれる人が増えればきっと成熟した国になれるのではないか、そんなことを思った。

 

なんか、国のこと考えるとか真面目なことだけ書いて終わるのはいやなので、ゴリラとオオカミとワニが大きくなって街を破壊する最高の映画『ランペイジ巨獣大乱闘』をお勧めして終わります。

 

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(鑑賞記録)どいつもこいつもクズばかりだけど・・・『アイ・トーニャ 史上最大のスキャンダル』

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本作が元にしている1994年に発生したナンシー・ケリガン襲撃事件は世代的に全く知らなくてあまり興味がなかったものの、人に勧められた映画は全部観る派なので行ってきました。

 

結果、めちゃめちゃ面白かったです。

 

雑にあらすじを書いておくと、アメリカ人として初めてトリプルアクセルを決めた実在のフィギュアスケータートーニャ・ハーディングの半生を描いた映画。

トーニャ・ハーディングオレゴン州の貧困家庭に生まれ、幼い頃から家庭内暴力に晒されながら実績を積み重ね、オリンピックへの出場を決めるもののライバル選手のナンシー・ケリガン襲撃事件に関わった容疑でスケート界から永久追放された。

 

映画は襲撃事件を話のクライマックスを置き、擬似インタビューで過去を振り返るの体を取りながらトーニャが生まれ育った環境を描く。

 

この環境がなかなかに壮絶な貧困。「貧乏と貧困は違う」とは湯浅誠さんの言葉だけれどその言葉通り、文字通り構造的に豊かさや安心・安全から隔絶された環境。そこから抜け出す唯一の希望として母親に半ば強制されたスケートという道を突き進んで行くトーニャの姿をものすごいテンポ感で描いていく。

言葉を選ばず言うなら、どいつもこいつもクズばっかり。

話の中心になるDV母親とトーニャのDV夫、その友達の自称「テロ対策のエキスパート」は特に。

(映画で観るクズほど面白いものはないので上は褒め言葉)

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常に暴力をふるい続ける母。一回だけ優しい顔をしたかと思えば・・・

 

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マーベル映画での役(バッキー)から一転。最低男を演じる

 

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映画用にだいぶ誇張されているのかと思えば、そのままだったという電波男。ただ、直接描かれないけど彼がそうなってしまった背景に思いをはせると少し同情してしまう。いや、同情の余地はないんだけど・・・・
 

 

そんなクズに囲まれたトーニャも生きて行くために歯を食いしばってスケートにしがみついて行く。

ただ、スケートに求められる「品」を備えていないが故に干されて、スポンサーもつかず、ウェイターで生活費を稼いで闘う。

 

20歳そこそこなのにこの状況。

 

そしてそこから起こるライバル選手への襲撃事件。

映画では本人たちの証言の食い違い・矛盾まで映像化しているのでトーニャたちがどこまで関与していたか正直わからない。ただ、トーニャが置かれていた壮絶な環境とラストで流れる実際の演技映像の美しさのギャップに完全に涙腺を持っていかれた。

 

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襲撃事件の司法取引でスケート界を追放されるトーニャ

 

スケートシーン含めて、とにかく演出がキレッキレでまったく飽きずに最後まで集中して見れた。反動で帰りの電車で疲れて爆睡でしたが。

 

主演のマーゴット・ロビーが自身のキャリアを広げるために製作にも参加していたり、作り手の熱量が普通にとっても面白い題材を二段も三段も上のレベルの映画に押し上げた大傑作。たぶん、これから何度も見返すことになると思います。

 

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(左)マーゴット・ロビー、(右)実際のトーニャ・ハーディング

何も起こらないのにドラマチック『粛々と運針』(iaku 演劇作品集)(鑑賞記録)

粛々と運針

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iaku演劇作品集

 

iakuは大阪を中心に活動する劇作家・演出家の横山拓也さんが立ち上げた演劇ユニット。全国各地で公演を行うなど活動地域が広い。大人の鑑賞に耐え得るエンタテイメントを掲げている。

 

名前はずっと前から聞いていたけど、観に行く機会がなく今回やっと行けました。

 

とはいえ、今回は演劇作品集という建てつけで4本上映のうちの1本、『粛々と運針』に行けただけ。『粛々と運針』は札幌公演も決まっている。

 

舞台装置は極めて簡素で椅子のみ。3つの物語が舞台上にあり、それぞれの差は照明で表される。

物語はそれぞれ「母親の体調が思わしくない40歳近くの兄弟の会話」「妊娠したかもしれない30代後半の夫婦」「素性はわからない年齢不詳の女性ふたり」の3つ。

 

いわゆる会話劇で派手な展開はない。問題は幕があがる前からそこにあって、解決もなにもせずにずっとそこにある。ただ、問題に対するそれぞれの葛藤が垣間見えるだけ。それがめっぽう面白い。

 

舞台上で扱われるのはおそらく30歳を過ぎたあたりから誰もが直面せざるをえない問題なので特段の真新しさはないし、突飛な意見が出るわけでもない。それなのに面白い。

 

人間の葛藤を丁寧に描くだけで十分ドラマチックであることを証明するような舞台。

何も起こらないけどドラマチック。

 

この演目は札幌のほか、9月に相模大野で公演があるなどたぶんこれからもずっと再演が続けられる作品。

 

大学生の時に見ていたらもしかしたら、何が面白いのか全くわからなかったかもしれない。

年齢を重ねるとまた見え方が変わりそう。10年後に挑戦したい。

 

【iaku公式web】

www.yokoyama-iaku.com/index.html

 

【作品情報】

「粛々と運針」
作・演出/横山拓也
出演/尾方宣久(MONO)、近藤フク(ペンギンプルペイルパイルズ)、市原文太郎、
伊藤えりこ(Aripe)、佐藤幸子(mizhen)、橋爪未萠里(劇団赤鬼)